『松下幸之助 茶人・哲学者として』感想
松下電機(現パナソニック)の創業者の松下幸之助の考えを、その発言から紐解かれています。
そして、「経営には無関係に見える茶道を、なぜ幸之助が続けていたのか?」という疑問への答えを読むうちに、経営の神様の哲学がより深くわかります。
まず、松下幸之助が大切にしていたというのが、『雑宝蔵経(ぞうほうぞうきょう』の無財の七施(ななふせ)。
・顔施(がんせ);優しい目で接する
・和顔施(わがんせ);にこにこする
・愛語施(あいごせ);自分から先にいい言葉を使う
・身施(しんせ);自分で行動する
・心施(しんせ);思いやりの心をもつ
・床座施(しょうざせ);座席を譲る
・房舎施(ぼうしゃせ);宿を貸す
この七施や、茶道を通じて「和敬静寂」「他人のために気を遣うこと」を学んだそうです。
やっぱり、「情けは人のためならず」ということでしょうか、わかっていてもなかなかできないことですが、いつも心がけることが大事なんですね。
そして、「人に助けてもらえる人になること」が必要であると説かれています。
ところが、これと相反するようですが「主体性」の大切さも解かれていまして、「自分の力でやろうという決意」が必要であるとおっしゃっていたそうです。
松下幸之助は次の3つを日本の伝統精神と考えたそうです。
・和を尊ぶ;こまやかな気遣い
・衆智を尊ぶ;話し合うこと
・主座を保つ;自主独立
初めの2つは、人付き合いには欠かせないものとわかります。ただ、ここに「自主独立」を溶け込ませるのは、とても難しいように見えます。
気を遣う人ほど、「自我を出すと和を乱してしまうのでは?」と思うものではないでしょうか。
しかし、謙虚すぎては自分を殺してします。
自主独立とは一人一人が自分の哲学や目標を持つということかと私は思いました。
みんなが自分の哲学があるから、多様な意見がでて、話し合いができる。そこに気遣いがあれば、和が保たれ、組織ができるということかと。
雇われて働く身になると、「組織に合わせる」「従う」と考えがちですが、もっと意見を言う勇気が必要ということかと思います。
全員が「聞く」「話す」の両方ができなければ、優秀な組織はできないということかと。
これからの時代は尚更。
谷口全平・徳田樹彦著,『松下幸之助 茶人・哲学者として』,宮帯出版,2018